Miyoのハンドメイドレポ

料理・製菓・製パン、アイヌ文化や湿地など、 いろいろなことに興味がある Miyo のサイトです。北海道出身。趣味はお料理や手仕事、読書、音楽、運動、野外活動など。このサイトを通して、 手作りの楽しみや自然の魅力をご紹介していきます。

ニカプンペ(ゴザ)ついに完成!

ニカプンペ、ついに完成しました!
カエカ(糸撚り)から初めて約8ヶ月。
遠征の合間を縫って、少しずつ進めた成果です^^
長さ155cm×幅60cm!

完成したニカプンペ(文様付きゴザ)

完成したニカプンペ(文様付きゴザ)

長文になりますが、以下に工程を追いますね。

まず、いただいたアッ(オヒョウ)を薄く剥がします。
何層にもなっているので、水で濡らしながら剥がします。
それを、糸用は細く裂き、染める用は幅広の状態のままにしておきます。
今回のオヒョウの皮は前の年に木から剥がしたものですが、今年度の樹皮剥がしに同行させていただき、その工程も体験させてもらいました!
樹皮剥がしのあとにその皮を煮る工程もあるので、本当に本当に、時間と手間のかかるものなんです。

次にオヒョウのカエカですが、これに時間がかかりました〜
6月に始めて9月まで、ずっと糸を撚り続けました。
右手親指に水膨れを作りながら、4.5mの紐を22本。笑
道内あちこちを移動しながら、車の中でカエカしていました。笑
でもゴザを編んでいくうちに足りなくなってしまい、編みながら約1mずつ長くしました。
ちなみに、カエカをしてできた編み糸は、アイヌ語でイテセカと言います。

アッ(オヒョウ)をカエカしてできたイテセカ(編み糸)

アッ(オヒョウ)をカエカしてできたイテセカ(編み糸)

ピッ(石)に紐をつけるのですが、この石の選び方が重要なんです。
大きさ、重さ、形、表面の滑らか具合(ザラザラ感)。
川へ行くたびに、やることやりながら石を探していました。笑
妥協して石を選ぶと、ゴザを編むときに効率が落ちてしまいます。
重さは100g程度、単一電池と同じくらいだそうです。
形は、できれば中央が凹んでいた方が、糸が滑り落ちません。
同じ理由で、表面はツルツルより少しザラザラしていた方が使いやすいです。
最近では、石ではなく電池やボルトを使う人もいるそうです。
でも、編んでいるとき、石と石がぶつかる音がとても落ち着くので、私は絶対に石をおすすめします^^
今回はニカプンペは縦糸が22本のため、最低でも44個の石が必要でした。

22本の縦糸に、44個のピッを付けます

22本の縦糸に、44個のピッを付けます

ゴザの文様を作る黒と茶色は、染めたオヒョウをガマに被せています。
昔はクルミやハンノキ、イチイなどで染めていたそうです。
今回はコールダイというeco染料を使っています。
黒3段+茶2段+黒3段には魔よけの意味があり、平取町二風谷に伝わる文様の特徴なのだそうです。

9月に地震があったので、10月頭からいよいよゴザを編む工程に入りました。
大量のシキナ(ガマ)と木目がとても素敵なイテセニ(編み機)をいただき、自宅で編み進めました。
最近はガマが生えているところが少ないので、たくさん集めるのはとても大変だったと思います。
本当にありがたいです。
編む工程に入ると持ち運びは難しいので、家にいるときにしかできません笑
文様の設計図を見ながら、染めたオヒョウをガマに被せて編み込んでいきます。
だんだん文様ができていくのが楽しかったです!
ガマが乾燥しすぎて割れそうになるので、霧吹きで湿らせながら編みます。
ポイントはガマの太さを揃えることと、しっかり締めること。
手前の糸を少し持ち上げながら手前に引くと、あまり力を使わなくても締まります。

文様を作りながら編み進めます
文様ができていくのが楽しいです
文様の部分が完成
文様を作りながらニカプンペを編み進めます

 二風谷では、文様の部分はすだれ編み、最後の無地の部分は一本おき編みだそうです。
一本おき編みのときは、表面のガマができるだけまっすぐになるようにすると、自然と裏面はギザギザになります。
すだれ編みよりも一本おき編みの方が少し頭を使いますが、慣れればまったく問題なし。
むしろおもしろかったです!
ラストの黒3段は、一本おき編みをしながら黒いオヒョウを被せました。

無地の部分は一本おき編みです

無地の部分は一本おき編みです

編み終わると、紐の始末です。
両端から中央に向かってコイル巻きし、中央で8つ編みをします。
ゴザを丸めたときには、この8つ編みの紐で縛ります。

最後に両端から出ているガマを切り揃えて、完成です!
助成金の報告書締切りには無事に間に合いました笑

まだオヒョウやガマが余っているので、小さなゴザなら作れそうです^^

文様があるニカプンペは、イオマンテやチセノミなどの儀礼の際に使われたそうです。
また、文様部分に家主が座り、無地部分に物を置いたそうですが、壊してしまいそうで勿体なくて、文様のところになんて座れないよ〜笑
でも、ガマの中はスポンジのような構造で空気を含んでいるので、座るととっても暖かいです!

スポンジ状の断面がよくわかる、丸めたニカプンペ

スポンジ状の断面がよくわかる、丸めたニカプンペ

アイヌ生活文化再現マニュアルのおわりに、
アイヌの女性が創り出すさまざまな文様のなかで、ゴザに施された文様は、唯一『直線の美』ともいえるものであり、着物などに施される曲線の文様とは対称的なもの」
という記述があります。
次はアイヌ文様の刺繍にも挑戦してみたいなぁと思ったりしています^^

今回ニカプンペ複製を教えてくださった貝澤美和子さん、イテセニを作ってくださった耕一さんをはじめ、太一さんや珠美さんにもいつもお世話になっています。
本当にありがとうございます。

丸めたニカプンペ
ニカプンペの裏面
丸めたニカプンペ、ニカプンペの裏面

ガマではなく、マコモを使ったキナ(無地のゴザ)も作りました!